Picked Up Tsuyokute New Saga

Discussion in 'Novel Pickup Request' started by kraken296, Jun 24, 2016.

  1. pirateking36

    pirateking36 [[-Worst King-]]

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    isn't there a LN and a manga of this one?
     
  2. rei_hunter

    rei_hunter Well-Known Member

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    pretty sure LightNovel Bastion is doing the Light Novel. .-.

    The WN is kinda dead on the internet though.
     
  3. lygarx

    lygarx Lazy Translator

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    you are right. wn raws is being deleted i believe
     
  4. runsing

    runsing status : bleeding, health -10/s Novel Updates Staff

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    and you literally live here now, aren't you? are you 'watching' every subforum? an f5 sect on nuf

    by 'deleted' you mean the raws?
     
    Wujigege likes this.
  5. MaidChan

    MaidChan 『Battlemaid』 『TRAP』 『Homeless Maid』

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    Isn't this the one written by a 17 year old kid???...

    (If not then forgive this lowly maid.)
     
  6. Astaroth

    Astaroth empty

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    Who cares who wrote it? A monkey can be the author for all I care, the novel is good so I'll read it.
     
    Wujigege, keklel and Dedition like this.
  7. xtremeloldude

    xtremeloldude the slime guy

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    well does that matter though? the book "eragon" that became an amazing success (though the movie didn't live up to that) was also written by a 17 year old
    Also, getting back on topic, why isn't the LN good enough?
     
    Wujigege and Dedition like this.
  8. SoulZer0

    SoulZer0 Heaven Refining

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    Welp, what can I say... Yeah, I guess..
     
  9. mengheavenlymonster

    mengheavenlymonster Well-Known Member

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    Yeah that novel is reincarnation done right.Please someone I also implore pick it up
     
  10. Wildzhen

    Wildzhen Well-Known Member

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    I would rather they pick up the pace on the manga side XD. I love that one. I encourage the Great Translation Force MAKE IT HAPPEN.

    :po_O:barefoot:o_O:cry::sneaky:(y)
     
  11. BauerIvan

    BauerIvan Well-Known Member

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  12. Parth37955

    Parth37955 [Unavailable, go away] Staff Member

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    LN is already picked up. There's a guy doing the WN now so locked.

    unlocked
     
    Last edited: Oct 8, 2017
  13. Chance

    Chance Observer

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    Reviving a dead thread. But yea, can we get someone to pick this series up? Ill put up a bounty and match what others put in.
     
  14. pr337k4m4197

    pr337k4m4197 ✪ KILLER SMILE!!!!!

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  15. Dusk

    Dusk Monochrome

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    The raw link is dead, the author took it down I guess.
     
  16. Chance

    Chance Observer

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    hmm the data source is now https://www.alphapolis.co.jp/novel/159124863/713069479 and you can get the raw text by using textise or something similar. Also i think re:translations has up to volume 4 on google docs but in pic form.

    TL:dr raws are available for the LN, WN is MIA.

    神秘と冒険者の国。人族領のほぼ中央に位置するエッドスは、そう呼ばれていた。
     その特徴の一つは、国土の七割以上が森林に覆われていることだ。
     ロインダース大陸の深い森には大抵魔獣がいるが、エッドスの森に棲息する魔獣の種類と数は飛びぬけて多い。その中には、高い知性と独自の魔法を操る強大な力を持った、伝説にしか登場しないような幻獣もいる。それこそ、エッドスが『神秘』の名を冠する由来だった。
     もう一つの呼び名の由来は文字通りである。この国には多くの冒険者がいるのだ。
     冒険者のことを端的に説明するのならば、『何でも屋』だ。ちょっとした配達や街から街への移動の護衛、錬金術れんきんじゅつの材料になる特殊な素材の調達、害になる魔獣の討伐や古代の遺跡探索等々……様々な仕事を請け負い、解決するのが彼らの仕事だった。
     依頼の多くに危険が伴い、途中で命を落とすことも珍しくないが、その分見返りも大きいので、一攫千金いっかくせんきんを求めて冒険者になる者は後を絶たない。
     エッドスのある地域は、地脈と言われる大地の魔力の流れが強いらしく、それを利用した古代魔法王国ザーレスの実験場や遺跡が数多く残っている。遺跡荒らしトレジャーハント専門の冒険者にとってはまさに宝の山。更にこの森の魔獣から採れる肉に毛皮、角や爪、血液などは多方面で有益な素材となる。
     そういった理由から、エッドスにはとりわけ多くの冒険者が集まるのだ。
     ガルガン帝国で行われたあの武術祭から三か月。
     カイル達は今、エッドスの首都リネコルにいた。


    「結局ほとんど何も解らなかったな……」

     多くの人々が行き交い、活気に満ちたリコネルの大通り。しかし一行の先頭を歩いていたカイルは、そんな賑わいとは対照的な少し疲れた声で呟いた。

    「仕方なかろう、元々雲を掴むような話だ。お主とてそれほど期待してはおらんかったのだろう?」

     いつも通り屋台で買った串焼き肉を齧かじりながら、隣を歩くシルドニアが応える。
     カイル達がこの国に来たのには、二つの目的があった。
     一つはメーラ教について調べるためだ。
     帝国でカイルに接触してきたメーラ教徒のバーレルが、各地とやり取りしていた手紙。そこに隠されていた暗号をミナギが解読した結果、メーラ教の動向が僅わずかながら判明し、このエッドス国で何らかの活動をしているとの情報を得られた。
     そこでこの国に来てはみたものの、手がかりらしきものは未だ掴めていない。
     この三か月の間に色々と調べたが、結局ほとんど何も解らずじまいで、有力な手がかりがない以上、カイル側からメーラ教絡みでできることはない。
     メーラ教に関してはガルガン帝国のような大国も調べているが、その実態はようとして知れない。
     大国でもそうなのだ。いくら優秀な密偵であるミナギがいても、そう簡単に実態が掴めるはずもない。シルドニアの言う通り、何か掴めれば幸運、というレベルの期待だった。

    「……まあ確かに元々、つ い で ではあったからな。解っている限りの情報をまた帝国に知らせておくさ」

     カイルが掴んだメーラ教の情報――といっても僅かばかりの足跡程度だが――は、第三皇子であるマイザーを通じて帝国に伝えている。
     メーラ教とは決して相容あいいれない。追うのを諦める訳ではないが、他にやることもある。

    「……次に奴らが何かしてきた時が勝負だな」

     この三か月、メーラ教からの接触は無い。だからといって絶対に油断はできなかった。

    「しかし何でお前はメーラ教に気に入られたんだ?」
    「それは俺が聞きたいよ」

     頭の後ろで手を組み、だらしなく最後尾を歩いていたセランが欠伸あくび交じりに尋ねると、カイルは心からのため息をつく。
     カイル自身、何故自分がメーラ教に狙われることになったのか、理由が思い当たらない。
     売り出し中の英雄候補として目を付けられたかとも思ったが、それ以上の妙なこだわりが見受けられたし、あまりにも強引過ぎるのだ。

    「気に入られる要素が解らない……俺に利用価値があると認めたとしても、おかしな点が……」

     理由が解れば対策も考えられるんだが……とカイルは頭を掻かく。

    「……そもそも、そのメーラ教ってのがよく解らないのよね」

     いまいち納得いかないと言うのはリーゼだ。
     彼女達は武術祭が終わった後に、メーラ教のことを知った。しかしその後何も起きていないため、あまり実感が湧いていないようだった。

    「それとあの女……ミナギの言うことに信頼はおけるのか?」

     リーゼの隣のウルザが、難しい顔で言う。
     ミナギは現在カイル達に同行していなかった。
     あくまで金で雇われている一時的な関係だという姿勢をミナギは崩していない。必要な時に報告に来るだけなので、リーゼ達は最初に紹介された後、数度しか顔を合わせていなかった。
     そんな事情も手伝い、ミナギの腕が立つのは解るが信頼できるのか怪しい、というのがリーゼとウルザの共通見解だ。

    「……そこら辺は俺を信じてほしい。俺がミナギを雇うと決めたんだ。俺が全て責任を取る」

     カイルがそう言うと、少し不満げな顔ではあったが、リーゼとウルザもとりあえず納得したようだった。
     二人の様子を見て、ミナギを紹介した時もひと悶着もんちゃくあったことを、カイルは思い出す。
     出会った経緯は何とか誤魔化ごまかしたものの、リーゼは妙に邪推するし、ウルザも不機嫌になっていた。
     実際、ミナギは暗殺をも請け負う裏社会の人間だ。それを全く気にしない性分のシルドニアやセランはともかく、一般人に近い感性を持つ二人には、受け入れ難がたいものがあるのだろう。
     前世で彼女の性格をよく知るカイルからしてみれば、ミナギの人格に問題はないし、むしろ大いに信頼していた。報酬を払っている限り、彼女が裏切ることなどないと確信している。
     これからはミナギの協力が絶対に欠かせない。それでリーゼ達に不安を与えるなら何か対応を考えなければいけないのだが、まだ具体的な手は思いつかない。

    (もうしばらくはこのままだな……距離を置いておけばいずれ慣れてくれるかもしれないし、あるいはなんらかの切っ掛けでもあれば……)

    「それにしても本当、この国は冒険者が多いな」

     セランが相変わらず気の抜けた口調で――しかしその目は鋭く周りを見ながら――言った。
     確かに先ほどから、明らかに一般人とは違う、独特の雰囲気を纏まとった者達と多くすれ違っている。
     兵士のように統一されている訳ではなく思い思いの武装をしているので、嫌でも目に入った。普通の街中ならば目立つであろうカイル達の姿も、この国では通行人の一部として埋もれてしまうくらいだ。

    「それに景気もよさそうじゃ」

     同じく周りを見渡し、シルドニアが言う。
     リネコルは都市の規模こそ小さいが、建物の豪華さはジルグス王国やガルガン帝国にも引けを取らないほどに立派だった。国土の大半を森林で覆われている小国とはとても思えない。

    「それはやはり冒険者が多いからだろう。この国にとって冒険者は大きな収入源だからな」

     成功した冒険者の中には途方もない財と名誉、地位を手に入れる者も珍しくない。カイルが言う通り、その懐をあてにした冒険者向けの施設も多く、様々な点で優遇されるので、冒険者が更に集まりやすくなる。
     金を持っている冒険者が集まり、その金を落とすことで、自然に都市が豊かになっていく。エッドスにとっては冒険者自体が国の一大産業なのだ。

    「それでこれからどうすの?」

     リーゼが尋ねた丁度その時――

    「そうだな……もう一つの目的を果たすとするさ」

     カイルは探していたある建物を見つけた。

    「『暁あかつきの火竜亭かりゅうてい』……ここのようだな」

     そこは石造りのしっかりとした建物で、『冒険者の酒場』と呼ばれる場所だった。様々な依頼が持ち込まれたり、仲間の募集や情報交換が行われたりと、冒険者達の拠点となっている。
     この店で何より目立つのは、ドラゴンを模した立派な彫像が入口上部に飾ってあることだろう。牙を剥むいた、今にも動き出しそうな迫力のあるドラゴンだ。
     その彫像を見たカイルは、このエッドスを表すもう一つの言葉を思い出す。
     神秘と冒険者と――そしてドラゴンの国である、と。




     2


    『暁の火竜亭』に入ったカイル達が抱いた第一印象は、普通の大きな酒場とそれほど変わらないなということだった。
     テーブル席がいくつか並び、カウンターの中には店主らしき中年男性がいて、その背後の壁一面に備えつけられた棚には酒瓶が並んでいる。
     しかしよく見ると、普通の酒場と違う点もある。
     たとえば、壁の一角に沢山の紙片が貼られていること。これは冒険者達に対する依頼書だ。
     他の街なら引越しの手伝いや下水の掃除など、猛々たけだけしい冒険者向きとはとても思えない内容も多い。だがここエッドスでは国の特性上、魔獣から採れる素材や遺跡の発掘物を調達してほしいという依頼が大半を占めている。
     カウンターの隅にある受付のような場所には女性店員がいる。おそらくそこで依頼品や報酬のやり取りをするのだろう。
     そして何よりも普通の酒場と違うのは、客層だ。
     現在の店内には十人前後の客がいるが、誰もが剣なり魔法なり格闘なり、何かしらの戦う術すべを高いレベルで身につけている。そうカイルは肌で感じ取っていた。
     その冒険者達は、初めて見るカイル達のことをさりげなく、しかしじっとりと注視している。
     エッドスでも特に腕利きの冒険者が集まる店という評判を聞いていたカイルは、噂通りだと満足した。
     カイルはカウンターまで行き、髭面ひげづらでがっしりとした体格の店主らしき男の前に立った。

    「見ない顔だな。うちは新人には最初は……」
    「ああ、違う。依頼を請けに来たんじゃない。依頼を申し込みに来たんだ」

     カイルの言葉に、店主は訝いぶかしげな顔になる。 
     この店は腕が立つ冒険者が集まる分、その報酬も高額だ。壁に貼られている依頼書も難易度の高いものばかりである。
     そのため依頼者の大半は、大商人や貴族というそれなりの地位か財産を持つ者がほとんどだった。カイルのような若い依頼人は珍しいのだ。
     とはいえ冒険者が冒険者を雇うことも珍しくはないので、店主は気を取り直してもう一度話しかける。

    「まあ手数料として依頼料の一割を店が貰えれば、依頼は誰でもできる。それを請ける請けないはあいつらの自由だが……」

     店主はテーブル席の冒険者達をちらりと見る。
     冒険者の酒場で依頼を請けることができるのは、店主に認められた者だけである。必然的に、店主の目利きがその店の評判を左右する。
     一流どころの冒険者達を日夜相手にして目の肥こえた店主は、カイル達の装備が他の冒険者と比しても群を抜いており、それに見合った腕もあるとすぐに見抜いた。

    「で、依頼内容は?」
    「森に精通している冒険者を雇いたい。ある場所への案内を頼みたくて」
    「ある場所?」
    「……『竜の巣ドラゴンズネスト』」

     カイルがゆっくりと言ったその言葉は、店内に衝撃を走らせた。


     ドラゴン――実際にその姿を見た者は少なくとも、名前だけは五歳の子供でも知っている、最強の幻獣だ。
     神話時代を生きた最初にして最強の『神竜』を始祖とするこの生物は、肉体的な強さは言うに及ばず、高い知性をも兼ね備えており、魔族すら超える力を持っていた。
     だがそんなドラゴン達の数は人族はおろか魔族よりもはるかに少ない。そのため、歴史上その存在感が揺らぐことはなかったが、歴史そのものを変えることもなかった。しかも時が経つにつれ、更にその数を減らしているという。現在ではこの大陸における人族領のほとんどで見かけなくなっていた。
     しかしこのエッドスでは比較的目撃例が多く、人族領で唯一ドラゴンがいることが確認されている。
     それ故にエッドスはドラゴンの国とも呼ばれて、その棲息地には『竜りゅうの巣す』という名がつけられていた。


    「報酬は……十万ガドル払う」

     店主が何か言う前にカイルが報酬を提示すると、更に周りがざわめいた。
     普通の国民なら十年は暮らせる、破格の報酬だ。
    『竜の巣』は、ドラゴンが棲まうだけあってエッドス国でも最も奥深く、同時に最も危険な場所にある。一流の冒険者ですら命がいくつあっても足りないような危険を伴うが、それでもカイルの提示額は充分以上に見合う金額と言っていい。
     しばし呆気にとられていた店主だったが、頭を振って気を取り直し、カイルに聞く。

    「……何しに行く気だ? まさか『竜殺しドラゴンスレイヤー』でも目指すつもりか?」

    『竜殺し』は文字通りドラゴンを倒した者を指す称号で、これまでわずか数人のみが得た、まさに歴史に名を残す英雄の証だ。

    「行く理由は言えない。それを含めた高額の報酬と思ってほしい。何なら片道だけでもいい」

     あえて淡々と言いながら、カイルは一万ガドル分のザーレス金貨を取り出し、カウンターの上に置く。
     色々と疑問は尽きないが、断る理由は無い。店主はカイルの依頼を認めることにした。

    「……依頼人の、お前の名前は?」

     壁に貼る依頼用紙に内容を書き込みつつ、店主が尋ねる。

    「カイル、カイル・レナードと言う」

     周りに聞こえるように、意識的に大きめの声でカイルは名乗った。
     その瞬間、元々注目されていたカイル達に更に視線が集中する。そしてその視線には、はっきりと不快感や敵意に近いものが混じっていた。

    「解っていたことだが評判悪いなあ、こりゃまいったね」

     言葉の内容とは裏腹に、とても面白がっていそうな口調と不敵な顔でセランが言う。
     リーゼやウルザは仕方ないか、と苦笑いだ。

    「まあ想定内じゃろう」

     シルドニアも冒険者達の視線に全くこたえることなく、当然じゃなという顔をしていた。


     彼らのこうした反応は、カイル達がこの三か月の間に行ってきたことが原因だった。
     簡単に言えば、慈善活動だ。
     この時代、どの国でも中央部はともかく地方ともなると国の保護を得られず、ほとんど自力で統治を行っている場合が多い。
     カイルはそんな国の支援が届かない田舎の、特に魔獣の被害を受けたり、盗賊に悩まされたりしている村などを周り、元凶を片っ端から退治していったのだ。
     それも無償で。更に被害がより深刻なところには充分な施ほどこしまでして。
     手っ取り早く名声を高める方法として考えついたこの無償奉仕を、メーラ教について調べる傍かたわら、積極的に行い続けた。
     更にカイルは吟遊詩人を何人も雇い、このことを事実七割誇張三割ぐらいに脚色して、美談として広めさせた。
     元々ミレーナ王女の救出や、武術祭での派手な活躍などの下地があったため、カイルの名声は一気に多くの国で知れ渡り、本格的に英雄への道を歩みつつある。
     だがこれにより、困る者達がいた。本来そういった魔獣を退治して糧かてを得ていた冒険者達だ。
     冒険者でもないカイルに商売の機会を奪われること自体腹立たしいし、しかもそれを無料でやられるとなれば、自分達が報酬を受け取りにくくなってしまう。
     要するに『余計なことをしやがって』という訳だ。冒険者達にとって、カイルは商売の邪魔をしている偽善者に過ぎないのだ。

    「そうか……お前がなあ……」

     名乗ったカイルを改めて見た店主は明らかに、厄介事が舞い込んできた、と苦々しい顔になる。
     だが既に手数料を受け取っているし、はっきりと依頼を認めてしまっているので、今更拒否もできない。

    「では明日また来るので」

     カイルは軽く頭を下げた後、突き刺すような視線の中、何食わぬ顔で外へと出ていった。


    「あれで良かったの? どう見ても良い印象じゃなかったけど」

     酒場を出てすぐ、リーゼがカイルに聞いてくる。

    「確かにあれでは、大金を積んでも依頼を請ける者がいるかどうか」

     ウルザも渋い顔で言った。

    「ああ、それはそれで別に構わない。案内がいた方が楽ではあるが、いなくてもウルザがいれば何とかなる。エルフにとって森は庭のようなものだろ?」

     カイルは頼もしげにウルザを見つめる。
     エルフは生まれながらの森の住人だ。更に優秀な精霊使いであるウルザは、植物の精霊を操ることもでき、たとえ初めて来た森でも迷うことはないだろう。
     ウルザが当然だと言わんばかりに頷くが、すぐに不安げな顔になった。

    「まあな……しかしだ、本当にドラゴンと会うつもりなのか?」
    「ああ、そこは妾わらわに任せよ。妾の時代のドラゴン達の長おさ、『竜王ドラゴンキング』ゼウルスならよく知っておる。あれからざっと千と三百年は経っておるが、奴のことじゃからまだ生きてはおるじゃろ……」


    『魔法王マジックキング』ことシルドニアが自信満々に笑った。
     カイルの目的――それはドラゴンと交渉し、取引を行うことだった。
    翌日の昼頃、カイルは『暁の火竜亭』を再度訪れた。
     今日はカイル一人だ。他の面々には森に入るための準備を進めてもらっている。
     店内では何組もの冒険者達が何かしらの雑談をしていたが、カイルの姿を見た途端、一斉に好意的でない視線を突き刺してきた。
     壁を見れば、カイルの依頼書は最も目立たない隅に貼られており、それだけで歓迎されていないのが解った。
     随分と嫌われたな、と心の中で苦笑するが、ある意味予定通り。あえて無視して、そのままカウンターの、これまた苦虫をかみつぶしたかのような顔でカイルを見ている店主に話しかける。

    「その表情から大体予想はつくが、依頼を請けようというヤツはいなさそうだな」

     内心を隠して少し残念そうに装ったカイルが尋ねると、店主は眉をひそめたまま頷いた。

    「そうか、残念だな……」

     カイルは軽くため息をつき、じゃあ依頼は取り下げようと伝え、早々に引き上げようとした。その時、背後から声がかかった。

    「一応忠告しておく。いつ出発予定か知らんが、どんなに高額でもその依頼を請けるヤツはいないぞ」

     声の主は、がっしりとした体格の大柄な戦士だ。昨日は見なかった男だなとカイルは思った。
     装備はカイルの目から見ても一級品で、充分に使い込まれており、その物腰や独特の雰囲気からも、歴戦の猛者もさだと解る。

    「えっと……名前を聞いてもいいかな」
    「ゲツガだ」

     愛想のかけらもなく、男は簡潔に名乗る。
     何か言いたそうだった他の冒険者達は勿論、店主まで黙ったところを見ると、相当な信頼を得ているようだ。
     カイルも名乗ろうとしたが、それに構わずゲツガは一方的に喋り出す。

    「色々と時期が悪い。まず、最近は密猟が多いんだ」
    「密猟? この国じゃ魔獣の狩りは無制限のはずだが?」

     エッドスにおいて魔獣はいわば特産品の一つ。魔獣狩りはむしろ推奨されている。

    「その通りだが、一か所だけ例外がある。森に住むダークエルフ達の自治領、そこだけは立ち入り禁止なんだ」

     ダークエルフ――エルフよりも更に閉鎖的な種族で、人間の住む地域で姿を見ることはまずない。外見はエルフと酷似しているが、肌の色は闇に近い褐色で、白い肌の多いエルフとは対照的だ。

    「ダークエルフ達はエッドスができる前からあの森に住んでいる。建国の際に不可侵の条約を結んでいたとかで自治を認められていて、今でも居住地一帯にはダークエルフの許可がなければ入れない決まりになっている」

     もっともダークエルフから許可を得たヤツなんていないがな、と過去の苦労を思い出したのか、ゲツガは苦笑している。

    「そして知恵を持つ一部の幻獣、特にユニコーンなんかは完全にダークエルフ達と共存していて、手が出せないんだ」

     ユニコーンとは、見た目は白馬で、頭部に角が生えている幻獣だ。
     その角は回復に関係する魔法薬の材料において最も価値のあるものとされ、それ故狙われ続けてきた。今では大陸全体でもほとんど見かけられず、このエッドスに僅かばかりの数が棲息しているだけだ。
     現在の相場だと、ユニコーンの角は同じ重さの黄金よりもはるかに価値が高くなっている。

    「だが最近、その自治領に無断で侵入し、狩りを行っている奴らがいるらしい。そのせいでダークエルフ達は警戒……いやほとんど敵対状態になっていて、近づいただけで攻撃されてしまう。既にトラブルになり、命からがら逃げ出してきた奴も多数いて……そして、『竜の巣』に向かうにはダークエルフの居住地域を絶対に通らなければならない」
    「なるほど……森の中でダークエルフ達と戦うなんて、ほとんど自殺行為だしな」

     エルフと同じく森の住人と称えられる彼らの領域で戦うなど、愚の骨頂と言える。

    「あともう一つ、ドラゴンが最近妙に活発に行動しているんだ」

     ドラゴンの国と言われているエッドスだが、それでも年に一回遠くを飛ぶ姿が見られるか、くらいでしかない。それほど人間とドラゴンの棲む世界は離れている。
     だがこのひと月の間は事情が異なり、何度も目撃されていた。森で狩りを行っていた一部の冒険者に至っては、かなり至近距離でドラゴンを見かけたと言うのだ。

    「目撃情報からすれば同じドラゴンのようで、色々な場所に出現している……むやみに刺激したくないし、出会いたくもないのでな。皆全体的に森に入るのを控えている」
    「なるほど……それでか」

     昼間だというのに妙に店内に冒険者達が多いのを見て、カイルは納得する。ドラゴンとの遭遇は、熟練の冒険者にとってもそれだけ警戒すべきことなのだろう。

    「そして最後に……こ っ ち の 理 由 は自覚しているだろう?」

     ゲツガがかなりきつい目つきでカイルを睨む。
     カイルもさすがに少しばつが悪くなり、軽く頬を掻く。

    「あ~……しかし、それにしてはやけに親切だな?」
    「親切なんかじゃないさ……早い話が、とっとといなくなってくれ、ってことだ」

     確かにゲツガの口調は、親切とはほど遠い。

    「それでも俺にとってはありがたい忠告さ……じゃあその忠告通り、この依頼は取り下げることにするよ」

     カイルは壁に向かい、自ら依頼書を剥はがした。

    「いいのか? 前金は返さないぞ?」

     店主が少し驚いたように言う。これでは無駄に大金を払っただけでしかないからだ。

    「ああ、かまわない。金さえ積めば請けてもらえると思っていた俺が甘かっただけさ」

     もっとも目的は果たしたがな、とカイルは心の中で付け足した後、さっさと店を出ていこうとする。

    「最後に一つだけ聞きたい、お前は何をしに『竜の巣』に行くんだ?」

     そんなカイルの様子が気になったのか、店を出ようとするカイルの背中にゲツガが疑問を投げかける。

    「……なに、ちょっと話し合いに行くだけさ」

     意味ありげな笑みを浮かべた後、カイルは店を出た。


    『暁の火竜亭』を出て、カイルは大通りを歩き始める。
     すると、フードを被って人相を解らなくした何者かが、音もなく、それでいて自然な動きで近寄ってきて、その斜め前を歩く。

    「……どうだったの?」

     どういう技術なのか、前を歩いているというのに、その声はカイルにもはっきりと聞こえた。

    「ああ、予定通りだったよ。ミナギの方はどうだ?」

     近寄ってきた人影――ミナギにカイルは小声で答える。
     周りからは二人が別々に歩いているだけにしか見えないだろう。

    「ええ、こっちも問題ないわ。数日もすればカイルが『竜の巣』に向かったって噂が広まると思う」

     カイルは、案内人を請ける冒険者が現れるとは初めから期待していなかった。
     それでも依頼を出したのは、これから『竜の巣』に向かうということを宣伝するため。つまり依頼すること自体が重要だったのだ。
     ミナギにはそれに尾ひれをつけるように街中に噂をばらまいてもらっていた。
     大金を払ってでも『竜の巣』に向かいたい理由は何か――憶測は憶測を呼び、あっという間に広まってくれるだろう。

    「でも面倒な真似するわね」
    「後々必要になってくるから念を入れて広めておきたかったのもあるが……これからはとにかく目立つように行動したいのでな」

     一挙手一投足が注目されるような英雄になるのが、カイルの目的だ。

    「ドラゴンとの交渉も英雄になるための一環なのでしょうけど……本気でやるつもり?」

     本気、と言うより正気を疑うかのようにミナギが聞く。

    「ああ、無茶かもしれないが無謀ではない。ちゃんと成功の見込みがあってのことだ」

     そしてこれは、どうしてもやらなきゃいけないことなんだ――カイルはそう心の中で付け加える。
     それこそ人族の存亡にかかわることなのだから。
     歴史上、人族と魔族双方に対して常に中立、というか自ら率先して関わることのなかったドラゴン達であったが、前世で起きた人類の存続を懸けた戦いである『大侵攻だいしんこう』時には魔族の味方をし、人族を攻撃した。
     これに関しては、ドラゴンについて詳しかったシルドニアも大いに驚いていた。
     誇り高いドラゴン達が魔族に従う形で協力するなど、到底考えられなかったからだ。
     おそらくなんらかの理由で手を貸さざるを得なかったのだろう、とシルドニアは推測している。実際、直接対峙たいじしたカイルの目から見ても、ドラゴンの攻撃は散発的で効率が悪く、明らかに嫌々行っていると感じられた。
     もしドラゴン達が積極的に攻めて来ていたら、人族は間違いなく滅んでいただろうから、その点では幸運だった。
     だが幸運に頼っている訳にはいかない。ドラゴンには中立を守ってもらうか、できれば人族に味方してもらいたい。そのための交渉だった。

    (魔族の味方をした……いや味方せざるを得なかった理由も知りたいところだな)

     ドラゴン側から進んで魔族に協力することは、間違いなくない。だから最悪でも、魔族には協力しないよう、先に約束を取り付けたい。
     この交渉に関しては充分成功の目がある、というのがシルドニアの意見だった。
     人族が最も勢力を誇った古代魔法王国ザーレスの時代、つまり今から千年以上前の話だが、当時はドラゴンともある程度交流があったという。シルドニアは「少なくとも問答無用で攻撃されることはない」と自信ありげだ。

    「あのシルドニアが伝説の『魔法王』というのは……いまだに信じがたいのだけど」

     以前ガルガン帝国の晩餐会ばんさんかいにて、シルドニアと料理を取り合ったことを思い出しながら、ミナギは頭痛でもしたかのように眉間を人差し指で押さえる。

    「まあいいわ、それと例のア レ だけど、どう……」

     すればいい――ミナギがそう聞こうとした時、背後から声がかかった。

    「待ってください!」

     何やら切羽詰まった声だった。




     4


     一行が振り向くと、そこに立っていたのはおそらくカイルより少し年下くらいの少女だった。
     革鎧の上に実用一点張りの丈夫そうなマントを羽織り、頭は厚手の帯状の布を巻きつけて覆っている。それに加えて小型の弓ショートボウと矢筒を背にしょった、典型的なレンジャー姿だ。
     少し幼いながらも整った顔立ちの美しい少女は、芯の強そうな目でカイルを見つめている。
     その目を見た時、カイルは妙な心のざわつきを覚えたが、それを抑え、冷静に話しかける。

    「俺に何か用かな?」

     この時点でミナギの姿はもうない。
     彼女の役目は完全な裏方であり、人前で一緒にいるところを見せない方が色々と都合が良いのだ。

    「カイルさんですね! わたしはエリナと言います。あの……『竜の巣』への案内人を探していると聞きました! わたしを雇ってくれませんか! お願いします!」

     エリナが、地面に擦こすり付けんばかりの勢いで頭を下げて頼み込んでくる。

    「あ~……」

     カイルはやっぱり来たかという思いで頬を掻きながら、少女を見ていた。

    「も、もう決まってしまったのでしょうか?」

     カイルの反応に焦ったようにエリナが聞く。

    「いや、まだだが……」
    「だったら是非お願いします! わたしは薬草などの採集専門で、森には毎日のように入っていますので!」

     必死とすら言えるアピールだったが、カイルはどう断ったものかと悩んでいた。
     案内人を雇おうとしたのはあくまで『竜の巣』に向かうことを広めるための布石で、本当に雇うつもりはなかった。
     ただ、目立つために依頼料を十万ガドルという大金にしたので、たとえ冒険者に評判の悪いカイルが依頼人でも、あるいは請けようとする者が現れるという可能性はあった。
     それを回避するために、周りの評価にも気を使うような一流の冒険者が集まる『暁の火竜亭』に依頼し、一日と経たずに取り下げたのだ。
     もし売り込みがあった場合、当初の予定では適当に難癖をつけて断る考えだった。エリナの場合なら、若すぎるという点が断る理由になるだろう。
     そして、もう一つ気になる点があった。

    「一つ確認したいが……俺が依頼をしたのは『暁の火竜亭』で、君はそこに所属している訳ではない、そうだな?」

     先ほどの店内にエリナがいなかったことを思い出しながら、カイルが聞く。

    「…………はい。カイルさんが大金を出して『竜の巣』への案内人を探していると聞いて、急いで駆けつけました」

     エリナはうつむきながら絞り出すように声を出す。
     冒険者の酒場に依頼した場合、その酒場に所属している冒険者しか、その依頼を請けられない。
     こういった依頼への横入り禁止が明文化されている訳ではないが、暗黙の了解として広く受け入れられている。
     もしそんなことをして噂が広まれば、冒険者としての信用を失うことになる。

    「それがどういう意味を持っているか解ってるのか?」
    「構いません、何ならこの依頼を最後に冒険者を辞めてもいいです!」

     それは覚悟のこもった本気の目だった。
     既に『暁の火竜亭』への依頼は取り下げているので正確には横入りではないのだが、エリナ自身、暗黙の了解を破っていると自覚しているようだ。
     今二人が話している場所は大通りだ。既に道行く周りの人々からも注目されつつある。この噂はすぐに広がるだろう。

    「そこまでして請けたい理由は……」
    「勿論お金のためです。どうしても必要なんです」

     はっきりと、エリナは言い切った。

    「そうか……」

     何のために必要か、カイルはあえて聞かなかった。金がいる理由など人それぞれだし、安易に踏み込むべきではないからだ。
     ただエリナが、後がない背水の陣で自分の前に立っていることだけは理解できた。

    「あ、あの……今ダークエルフ達が他の人族を排除しようとしているのはご存知でしょうか? 私はあの付近にも詳しいんです!」

     エリナが何とかカイルの興味を引こうと更に必死に訴える中、カイルはダークエルフという言葉に反応した。

    「それは本当か? できればダークエルフ達とは接触せずに『竜の巣』に向かいたいんだが」
    「は、はい! 母も元冒険者で、その母が作った詳細な地図もあります!」

     エリナはここぞとばかりに売り込んでくる。

    「う~ん…………」

     ここでカイルは考え込んでしまう。
     本当に雇うつもりはなかった案内人だが、ダークエルフの件は予想外だったのも事実。カイルも無用なトラブルは起こしたくはない。
     エリナの案内で本当にダークエルフとの接触を避けられるなら、雇う価値はあるはずだ。

    「……解った、雇おう。ただし報酬は依頼が終わった後で、前金は無し。それでいいか?」
    「あ、ありがとうございます! 頑張ります!」

     それまで悲壮なまでに思いつめ、真剣な顔をしていたエリナが、心からほっとしたような顔で笑顔を見せた。

    「出発は明日の夜明けで、東門に来てくれ」
    「解りました! 出発の準備をしてきますので失礼します!」

     エリナは大きく頭を下げた後、走り去っていった。
     その後ろ姿を見送ったカイルは、また自分でも解らない奇妙な感覚に捉われた。それから頭を軽く振って、リーゼ達との待ち合わせの場所に向かうのだった。


     リーゼ達との待ち合わせ場所は街の中心部にある広場だ。そこはこのリネコルで最も賑やかな場所でもある。
     石畳で舗装された広場は常時人で溢れていた。敷物の上に怪しげな商品を並べるうさん臭い露天商や、軽業かるわざで拍手と銅貨を集めている大道芸人、大声で辻説法つじせっぽうをしている秩序と法を司るレヴァイン神の信者など、多種多様な顔ぶれである。
     分けても一番目立つのは、この国の特色ともいうべき冒険者達だ。
     狩りの成果らしき虹色に輝く煌きらびやかな毛皮や、幼児の身長ほどもあろうかという巨大な牙を誇らしげに身につけて闊歩している。
     そんな人々でごった返している広場だが、中心部の水場兼噴水の傍にいたリーゼとウルザ、シルドニアの三人の美しさは特に目立っており、すぐに合流できた。
     シルドニアはいつもの通り、屋台の品を買いこんでいる。エッドスの名物だという食用に適した魔獣の肉焼き、香草で包んだ串焼きを両手いっぱいに持って、ご満悦だ。
     リーゼとウルザも同じく屋台で買い物をしたらしく、果汁を冷やした水で割ったものを飲んで、ひと息ついている。

    「お疲れ様……セランはどうした?」

     カイルは旅の準備をしてくれた労をねぎらった後、見かけないセランのことを尋ねる。

    「またどっかふらふらしてるわよ。もう少しで来ると思う」

     いつものこと、とリーゼが呆れたようにため息混じりに答える。

    「やはり冒険者の国だな、食料や日用品なども全部質のいいのが揃っていた。これで準備万端で明日出発できる……そっちはどうだった?」

     ウルザが今日の買い出しの成果に満足しつつ、カイルに聞いた。

    「ああ、結局案内人を雇うことになった」
    「案内人は雇わないんじゃなかったのか?」
    「それが少々事情が変わってな……」

     カイルが密猟とダークエルフの件を説明すると、ウルザが難しい顔になった。

    「ダークエルフか……私もダークエルフには会ったことがないのだが、とにかく他の人族に関わろうとしない連中らしい……エルフの私が言うのも何だがな」

     エルフとダークエルフは元々一つの種族だったが、遥か昔の神話の時代に二つに分かれたと言われている。 
     エルフにとっては特に敵対している訳でもなく、かといって親しい訳でもない、いわば顔も見たことのない遠い親戚のようなものらしい。

    「他には何か知っているか?」

     カイルもダークエルフについては詳しくなかった。『大侵攻』の最中にダークエルフとも共闘したが、碌ろくに会話できなかった。

    「そうだな……エルフのように、精霊魔法にはあまり適性がない。そのためか弓の扱いに優れていたり、様々な錬金術に詳しかったりするらしいが……森で敵対すると厄介なのは間違いない。避けて通れるのならば、それに越したことはない」

     エルフである自分がいてもどうなるかわからない、とウルザは言う。

    「となるとその案内人が大事じゃな。どういう奴なんじゃ?」
    「あ、ああ……それが……」

     シルドニアが聞くと、カイルは少しためらいながら、自分のことを必死に売り込んできたエリナのことを話した。

    「ふ~ん……女の子なんだ、それも何か勢いで雇ったみたいね」

     カイルの説明を聞くにつれ、リーゼの目つきが段々険しくなっていく。

    「しかしそんなにすぐに雇って良かったのか? 実力のほども確認してないというのに」

     ウルザも顔をしかめて軽くカイルを睨む。金が欲しいだけの騙かたり者かもしれないと言っているのだ。

    「うん? ……えっとたぶん大丈夫だと思うが……地図もあると言っていたし……」
    「では何らかの目的があって、接触してきたという可能性は?」
    「いや……それも無い……と思う……多分」

     どんどんカイルの声が小さくなっていく。
     エリナが現在最も警戒すべきメーラ教徒だったり、あるいはガルガン帝国の密偵だったりなど、何らかの目的を持っている可能性を全く考えていなかったことに、カイルは今になって気付いた。

    (確かに嘘を言っているようには思わなかったが……何故俺はそういった可能性を考えなかった?真っ先に疑うべきことなのに)

     まるでリーゼ達と対するように、無条件に信用してしまっていたのだ。

    「ふむ、さては情にほだされたか?」

     シルドニアが意地の悪そうな笑顔で言う。

    「……全く同情していないとは言わないが、嘘を言っているようには思えなかったし、成功報酬ということにも納得していたからな……」

     エリナの必死さから金に困っていたのは間違いないだろうが、それだけで雇った訳ではない……とカイルは自分に言い聞かせるように答える。

    「要するに可愛かったからだろ?」

     いつの間にか来ていたセランが、カイルの背後から話に加わる。

    「ああ、可愛いのは認めるが……って余計なことを言うな!」
    「ははは、可愛い女の子が困って必死になってたら、力になってやりたいのは当然だしな」

     気持ちはよく解る、と頷きながらカイルの肩を叩くセラン。

    「ふ~ん、やっぱり可愛い女の子には弱いのね」
    「前々から思っていたが、異性に関してはセランよりカイルの方が性質たちが悪いかもしれんな……」

     リーゼとウルザが冷たい視線をカイルに突き刺す。

    「結局男というものは千年たっても変わらぬということか」

     シルドニアは何やら昔を思い出したのか、しみじみと語る。

    「お前ら……好き勝手言ってくれるな」

     頭を抱えてしまうが、まるで反論できないカイルだった。
     
    Last edited: Jul 20, 2017
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  17. Iyev

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    I really had the hope who someone take this proyect.

    There is a lot of material and is pretty damm good, is sad who nobody take it and even the manga is ahead u.u

    Anyway, i ad hope at least xd
     
  18. paradoxialprodigy

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    i was reading the LN last year it was incomplete i guess.... but what is the status here on nu now.. and wb the raws
     
  19. Wujigege

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    Oh well. I am only interested in novels with easily accessible raws
     
  20. paradoxialprodigy

    paradoxialprodigy Active Member

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    what's the status on this one right now.
    the raws _ are these the one we are talking about